第35回医療情報学連合大会(第16回医療情報学会学術大会) 2015年11月1日~4日 沖縄県宜野湾市

大会長 ご挨拶

 

 

"Data is the new oil"という言葉が米国を中心に産業界のキーワードとなりビッグデータという言葉も流行語から一般的な抽象名詞となりました。正しいデータ分析による根拠はすべての分野で重視されており、特に医学・医療・健康分野で重要なことは論を待ちません。適切なサンプリングと厳格なInformed Consentに基づくモデル内で厳密な測定を行うことの価値は少しも減っていませんが、モデルの正しさを大量のあるいは網羅的なビッグデータの分析により確認することは避けられません。その一方でビッグデータの収集に厳格なInformed Consentを求めることは大変難しく、プライバシーとの軋轢が顕在化しています。わが国でも医療・健康分野で大規模なデータベースの整備が進められていますが、あくまでもプライマリーなデータ発出はほとんどの場合、個々の医療・介護機関や健診機関であり、個人情報保護への対応は医療健康分野全体の課題と言えます。大会が開催される2015年には個人情報保護法の改正が行われ、国を挙げてデータの利活用の促進に動いていると思いますが、より確実なプライバシー保護が必要であることは当然です。2005年の個人情報保護法実施以来、医療介護分野では、医療従事者等は以前からプライバシーをはじめとする人権に強い関心を持っていたにも関わらず、情報の扱いはどちらかと言えば後追いで対策に努めてきました。そのために、従来は自由に出来ていたことが出来なくなることもあり、あらたな作業や規則のの追加を強いられてきました。

しかし、従来から人権を重視し、尊重してきたわが国の医療介護の分野で、プライバシー保護のために新たな負担が生じること自体が不自然と言えます。データの活用により、医学が発展し、医療・介護の安全性が高まり、適切なサービスが整備されることは本来プライバシーと対立するものではないはずです。

Ann Cavoukian博士が1990年に提唱したPrivacy by Designという概念はポジティブ・サムを目指すもので、プライバシーの確保と利活用の促進の2兎を追うものと言えます。穴ふさぎ対策ではゼロ・サム以上は望めないために、わが国の転換期と言える2015年に医療情報学の立場から「2兎を追う」ことを議論することは意義深いと考えています。

会場は沖縄コンベンションセンターで、JCMI始まって以来、初の沖縄開催です。アクセスは東京・大阪に比べると多少は悪いですが、その分議論に集中でき、多くの方々にご参加いただき上記の主題を含め、医療におけるITについて語り合い、深いが議論できればと考えています。ご参加、ご来場をお待ちしております。

 

                          大会長 山本 隆一

                           東京大学大学院医学系研究科医療経営政策学講座

                           一般財団法人医療情報システム開発センター